【VALORANT】アナリスト思考型IGL(分析駆動)のやり方

分析駆動

それでは本題として、アナリストとIGLの話に戻ります。

分析駆動は、このプロトコルにおける根本的な判断条件そのものをアナリストが作ることから始まります。
そしてその判断条件を遂行するために、時にはシーケンスを的確に実行します。

つまり今回説明するのは、アナリストの分析条件を基盤として作られたシナリオです。

具体的には、アナリストが事前に勝率が高い条件を調査しておけば、IGLは判断に迷ったときに数値を根拠にすることができます。
さらに分析結果をチーム内で共有し、どういう情報が取れたらどの意思決定をするのかまで決めておけば、選手がインゲームで毎ラウンド全てを一から考える必要もありません。

このような、アナリストが作った判断基準をIGLの意思決定へ反映させ、その思考をチーム戦略の根本に置く手法を、本稿では分析駆動と呼びます。

分析駆動で必要なのは、上記のようにまずアナリストが判断基準を作っておかないといけないので、テクニカル分析でトレンドを見ていきましょう。
先ほどのzonic(2022)も、自分は統計をかなり重視し、数字から確認するタイプだと説明しています。

どういう条件の時に勝率が最も高くなるのか、という分析内容については頑張って探しましょう。
その内容については今回は割愛します。

勝率で最もシンプルだけど重要なのは、設置後の勝率です。
ここでは、設置後の勝率を基にした分析駆動の例について説明するため、きりはなプロジェクトの「構成けんさくん」よりデータを拝借します。

Ascentにおける簡単なデータを抽出しました。
注目してほしい点は、赤枠のサイト別プラント後取得率です。
B設置後の勝率は74.60%、A設置後は66.67%となっており、B設置後の方が7.93ポイント高いことが分かります。
ここからB設置まで到達した後の勝率が高いので、B設置を作れる盤面をなるべく増やしてみようという仮説を出してみると、攻撃側はB攻めを狙い、防衛側はB攻めを防ぐことが、勝率を基準に考えた際に重要視するべきポイントになります。

分析駆動では、こういう数字を意思決定の出発点として利用します。

そこで、実際の試合展開を考察してみると、防衛側はB側へ多くの守備リソースを置き、B3-A2で守ることがデフォルトになっているのではないか、という仮説を立てられます。

例えば、以下の配置って実質的にB3ですよね。

Bサイト内だけを見れば2人ですが、中央の[ジェット]はB挟みの経路を抑えているわけなので、B攻めに対しては3人分の守備リソースとして機能します。

では攻め側の視点にいくと、B3で守っているなら単純に人数が少ないAサイトへ攻めればいい、というわけでもありません。
それって、相手に勝率が低い方へ誘導されてるんですよね。
じゃあどうすればいいかと言うと、B2以下にさせてB攻めすることが分析駆動型のマクロです。

あとはこれをチーム内に共有して、デフォルトの終了条件をいくつか決めます。

  • A3であることが分かればデフォルトを中断し、B攻めに移行
  • B3であることが分かればデフォルトを中断し、AにプレッシャーをかけてからB攻めに移行

Aにプレッシャーを掛ける理由は、Aを攻めたいからではなく、A側へ守備リソースを寄せてB2以下へ変えたいためです。

余談ですが、「Aにプレッシャーを掛けてからB攻め」といったフェイク、「Bメインを取った後にAへプレッシャーを掛けてからB攻め」といったダブルフェイク、「普段A→Bを繰り返した後、A確保→そのまま時間を掛けてA攻め」といったフェイク偽装など、相手の配置を動かすことを目的として複数のフェイクを組み合わせる考え方を、本稿ではマニピュレーション(pronax型)と呼びます。
pronax(2016)はフェイクやダブルフェイクを多く使うIGLで、分析駆動におけるプロトコルとして非常に適用しやすいため、ここでは採用します。

ここで最初の話に戻ります。
情報やエリアを取る理由は、デフォルトの終了条件となる情報を手に入れたり、A側に守備リソースを寄せたいからです。

これで根本のマクロ認識は終わりです。
めっちゃ簡単でしょ?
「マップ理解」とかいう抽象的でよく分からない概念なんて必要ないです。

今回扱っている範囲では、最終的にどういう盤面を作りたいのか(シーケンス)、そのために相手をどこへ動かしたいのか(pronax)、そのために何の情報とエリアが必要なのか(プロトコル)、まで分解すれば、デフォルトで行っている行動へ一つずつ理由を付けることができます。

ちなみにこれしか続けていないと、そのうち相手にどうせB行くんでしょってバレます。
ANGE1(2019)も、構造化された戦い方だけでは重要な試合で読まれてしまうため、それだけでは勝利できないと述べています。
なのでAも攻めないといけないんですが、どうやってAへ行くかというと、ここでシーケンスを利用するのです。

普段は情報を取りながらプロトコルでBフィニッシュを狙っている中、突然最初からAフィニッシュまで設計したシーケンスを差し込めば、相手は普段のデフォルトに対する反応を逆に利用されることになります。

Xizt(2023)によると、シーケンスを繰り返した後、デフォルト(プロトコル)へ戻すことで上手く機能すると説明しています。

また、武器不利の状況、相手がOperatorを持っている時など、プロトコルを遂行するために広くエリアを取りに行くことで最初のキルを取られる危険が高い場合には、最初からシーケンスでフィニッシュするのも良いです。

他には、強いULTを持っているなど、普段よりA側のセット勝率を上げられる条件が揃っている時もシーケンスを実施する好条件になります。

Aフィニッシュのセットを大量に持っていれば分析駆動シーケンスになり、条件分岐を大量に持っていれば分析駆動プロトコル、相手のローテーション操作を強く利用すれば分析駆動マニピュレーションになります。