【VALORANT】アナリスト思考型IGL(分析駆動)のやり方

シナリオについて、別の経路からかなり近い思想へ到達しているのが、FENNELで複数回日本一を経験し、後にZETA DIVISIONのヘッドコーチを務めたJohntaと、Masters Copenhagen 2022で優勝したIGL ANGE1です。
Johnta(2016)によると、チーム全体の構造や戦術面は主に自分が担当し、ANGE1(2019)も、Johntaは自分より遥かに構造化された考えを持っていた一方、自分は選手へ多くの自由を与えながらラウンド中盤に指示を出したかったため、最終的に両者の中間を探したと振り返っています。

Boasterと違う点として、Boasterは再現性を重視しており、特定のシナリオを再現させるためには、各プレイヤーがある程度の秩序を持って動く必要があります。
これに対してANGE1は、各プレイヤーが決められた要衝へ向かうことだけを構造化しても簡単に読まれてしまうため、誰がどのエリアを取るのか、どこでプレッシャーを掛けるのか、それによって相手をどう動かし、最終的にどこを攻めるのかまで含めて、戦略全体を構造化する必要があるとしています。
逆に自由を増やしすぎた時には秩序を失ったとも振り返っているため、ANGE1/Johnta型は、シーケンスとプロトコルの中間に位置するシナリオ型としてかなり分かりやすい例です。

今回はあまり自由度について触れないので、ANGE1/Johnta型シナリオについてはこのあたりで。

最後に、Masters Shanghai 2024で優勝したGen.GのMunchkinおよびコーチHskについても触れておきましょう。

Gen.Gは2024年シーズンへ向けた選手再編を行い、その中でも特徴的なのが、Meteor、t3xture、Karonの3人が、それまでデュエリストを中心にプレイしていた選手だったことでした。
KaronはGen.G加入時点ではコントローラー初心者に近い状態だったと振り返っています。
またGen.G(2024)によると、Meteorもセンチネルへの役割変更を求められ、練習試合での経験すらない状態からセンチネルを始めたため、当初はこの変更にかなり苦労していましたと述べています。

つまり、役割変更を余儀なくされた選手が複数いる中で新しいチームを作る必要があり、その状態でも短期間で一定以上の再現性を出すためには、誰がどこへ行き、何のアビリティを使い、その後どう攻めるのかをあらかじめ整理しておく、構造化された戦い方はかなり相性が良かったと私は考えています。

Munchkin(2024)によると、HSKが作戦を持ち込み、それを選手たちが練習して遂行するという形が存在しており、その作戦の中へ複数のプロトコルとシーケンスが組み込まれていたと考えられます。

その戦い方が特に分かりやすいのがIceboxです。
プロトコルマスターの[KAY/O]と、アビリティの再利用が特徴的な[ゲッコー]を組み合わせ、2イニシエーターのアビリティによってエリアを少しずつ広げ、最終的には再びその2イニシエーターのアビリティを合わせて攻めるという大きなシーケンスを持ちながら、その途中には[KAY/O]ZERO/POINTに映ったらどうするか、[ゲッコー]ディジーが反応したらどうするか、といった細かなプロトコルが組み込まれています。
Fnaticで説明したシナリオ型と、かなり近い構造だと考えます。

一例として、A確保プロトコルからそのままA攻めへ移行するラウンドを挙げます。

この戦い方について、t3xture(2024)は、Gen.Gでは対戦相手専用の対策をほとんど事前準備せず、試合中に相手の動きを感じ取り、そこから刺さる動きをチーム内で話し合って対応する方式を採用していると説明しています。
また、同インタビュー内で「Pacificの他チームがGen.Gの作戦を真似している」という話も上がっていたように、真似しやすい、つまり再現性の高いプロトコルだったと考えられます。
対戦相手側から見ても同様で、d4v41(2024)は、この反復可能なセットプレーについて、他チームも使っていたため事前に研究済みだったにもかかわらず、実戦では対処できなかったと振り返っています。

つまりGen.Gは、対戦相手ごとに全く新しい作戦を大量に作ったり、その場で一から臨機応変に対応したりするというより、再現性の高い一貫したシーケンスとプロトコルを持ち、その仕組みを基盤として、試合中の相手に最適なプロトコルを組み合わせながら対応しているのです。