導入
アンボと申します。
今回は単発記事として、CS史上伝説のプレイの1つである s1mple の Falling No-scope AWP 1v2 Clutch は防げた説を考察していきます。
Falling No-scope AWP を知らない人がいるかもしれないので、一応動画を貼っておきます。
これはCSGOのプレイ経験がある人なら誰でも知っていることですが、ジャンプ中のAWPの精度は最悪で、加えて、スコープ無しの精度も最悪です。
そんな高乱数プレイ、お祈りプレイをメジャー大会プレイオフで見事成功したとして、スーパープレイの1つとして今でも語り継がれています。
このプレイは一見すると乱数が優ったプレイですが、被害者側のFnaticも対策次第では防ぐことができた説を考察していきたいと思います。
注意:ここで述べることは全て推測です。
背景
私の考察を述べるためには、まずはこのプレイが起こるまでの背景・経緯を知る必要があります。
このプレイが起こった試合「ESL One Cologne 2016 – Liquid vs. Fnatic」の前半ラウンドは、端的に言えば Fnatic側のボロ負けでした。
((https://www.hltv.org/stats/matches/mapstatsid/32394/liquid-vs-fnatic))
(例のプレイは14ラウンド目)
ピストルラウンドやそれに伴うアンチエコラウンドは問題なく勝利するものの、その後のラウンドは戦術・戦略など全ての面において完全敗北していました。
フルバイが始まる4ラウンド目から伝説のプレイが起こる前の13ラウンド目の間で、T側 Fnaticが奪取したキルの数はわずか20(ラウンド平均2キル)。
そのうち、フルバイラウンドで奪ったキルの数は9。
つまり、半分以上のキルがエコやフォースバイなどのリスクを顧みないプレイによって生まれていた無残な状況でした。
11ラウンド目開始時(バイ後)のマネー状況
加えて、以上の10ラウンドで 1stキルを取られて初手人数差を作られたラウンドが6つと、CT側 Liquid のやりたい放題でした。
例のプレイが起こるまでは7対4と、ラウンド差だけ見ればまだまだ追い上げの可能性がある状況ですが、試合内容を鑑みると、何を行なっても作戦は成功せず、Fnatic は負のループに陥っていたことが分かります。
特徴的だったラウンド
10ラウンド目
①4ラウンド目でCTがAメインにピークしてきたので、その対策として JW は敵が優先的に確認してこなかったロッカーのスペースに隠れ、敵の側面を取っていましたが、撃ち合いで敗北してしまいます。
②olofmeister がおそらくサイトにいるであろう AWPer(ポップフラッシュでAメインにピークしてきたため、Aサイト後ろにサポーターがいるのは確定している)を狙うために、味方からフラッシュをもらってミッドからピークするも、カバーで割り込んできた EliGE に意識を奪われてしまい、結局 jdm64 に倒されてます。
③B設置時の2対3の状況で、flusha はサイトに篭るよりCTベースを取る or ここでキルを発生させた方がベターであると判断したのか、CTまでオーバーピークして戦闘を起こすも敗北します。
④残った KRIMZ は、ヘヴンの jdm64 に釣られてしまい、ダクト部屋の EliGE に対応できませんでした。
このように、撃ち合いすらロクにさせて貰えない状況が多く発生していました。
作戦面でも Fnatic は敵を上回ることができませんでした。
フルバイラウンドの4、5、8、10ラウンド目で、flusha はB側で毎回いわゆる「TSM式」と呼ばれるマップコントロールを行い、ダクト部屋から敵を追い出していました。
そんな背景もあり、長いタイムアウトを取った後の11ラウンド目で、ダクト部屋にはもう敵がいないだろうと予想したのか、このラウンドだけモロトフを使用しないB攻めを行いましたが、そこにはなぜか AWP を構えた s1mple がいました。
11ラウンド目
Hiko の位置や A1-Mid3 配置という事実を鑑みると、Liquid 側はおそらくここでB攻めが来るであろうことを予想してるんですよね。
うーん、この、ぴえん。たぴおかおいし。
このように、戦術的にも戦略的にも敗北していた Fnatic は、士気が極限までに下がったお通夜状態であったことが予想されます。
ではお通夜になると何が起こるのでしょうか。
チーム活動をしたことのある方なら誰でも経験があるはずですが、コミュニケーションが取れなくなるのです。
問題のシーン
ここでようやく例のプレイの話に繋がります。
私は、このプレイは Fnatic 側のコミュニケーション不足によって引き起こされたプレイであると考察します。
注目して欲しいのは以下の2点です。
- KRIMZ と dennis が同じ位置(CTベース)に投げ物を入れている。
- dennis が倒された後、KRIMZ がヘヴンを見ている。
1つずつ述べていきます。
①について
コミュニケーション不足の典型的なプレイです。
プロリーグでも投げ物の被りは稀によく見かけますが、形態が違います。
稀によく見かけるパターン
ESL One Cologne 2020 – FaZe Clan vs. Vitality [Dust2]
15ラウンド目
Aショートに対するダブルモーリー。
これはコミュニケーション不足といえばその通りなのですが、正しく言うとコミュニケーションが取れない状況ゆえに起こったミスです。
おそらく、後続の broky、coldzera がサポーターとしてどこを燃やすのかを事前に打ち合わた上でのA攻めで、アタッカー枠の Kjaerbye、rain が投げ物を使うことは作戦の中に含まれていません。
そんな中、アタッカーの2人両方が生き残った状態でサイトが取れてしまい、手持ち無沙汰になった2人は、臨機応変に残ったモロトフをショートに投げたと考えられます。
この場合、「お前もモロトフ持ってんのか。俺がショート投げるね!」と意思疎通を行なってから投げるよりは、サイトの維持をいち早く行うため無伝達で投げるのが最善でしょう。
ゆえにこのようなダブルモーリーが起こったと考えられます。
では Fnatic の場合はどうだったでしょうか。
2対Nの状況になってからB攻めを行うまでの状況
olofmeister が倒されたのが 1:28、KRIMZ が jdm64 をキルしたのが1:04、B攻めを決行するのが0:40。つまり2人とも互いの投げ物を確認し合って、どのように攻めるのかを相談する時間くらいはあったはずです。
しかしそれらの意思疎通を済ましていないことは、2人の動きの違いを見ると明白です。
dennis はフラッシュをCTに投げ、s1mple がBへ向かって来る前に急いでサイトを取得しようとしています。
対して KRIMZ は、スモークをCTに投げ、s1mple が既に AWP を構えている or ピークしてくることを警戒しています。
プレイイングの目的がバラバラですね。
加えて、KRIMZ はミッドにいる時点でスモークを構えているので、彼がスモークを持っていることに気付いていない可能性はゼロです。
もしこの時点で KRIMZ が「CTにスモーク投げる」って伝えておけば、
・dennis が一人で先走る必要はなかったため、ヘヴン下で足音を立てることがなかった
→ s1mple に dennis の居場所が察知されることがなかった
・dennis と KRIMZ が互いにカバーできる隊列で攻めることができた
→ s1mple に1キル取られたとしても、すぐにトレードキルが取れた
など、様々な勝ち筋が予想できます。
しかし実際は 2人は互いにカバーできるポジションにはおらず、ヘヴンから降りてくる s1mple を KRIMZ がカバーすることができませんでした。
結論を述べると、コミュニケーションを取って攻めなかったために、s1mple に対して 一方的に情報を与え、1対1を繰り返してしまい、スーパープレイを誘発してしました。
②について
①は結果論だから正直どうでもいいのです。
私が一番指摘したい問題点は、②dennis が倒された後の KRIMZ の視点です。
dennis 視点では s1mple が降りてきていることが分かっているはずなのに、KRIMZ はそれを把握していません。
これは完全に主観ですが、dennis のデス時の表情も血気迫って報告したというよりも、クソラッキーショットでキルされて溜め息を吐いたと捉える方が自然です。
つまり KRIMZ に対して dennis の報告がないのです。
ゆえに、状況が分からない KRIMZ は、何やら戸惑いつつヘヴンを見ながらピークするのです。
これらのことから、Fnatic はコミュニケーションをしっかり取っていたならば、このプレイを防げた勝ち筋はいくらでもあったのではないかと私は予想します。
まとめ
このように、こまめにコミュニケーションを取らないと事故を誘発してしまうということが理解して頂けたでしょうか。
とは言えども、お通夜状態で dennis に俊敏な報告しろと指摘するのも酷なものです。
特にヨーロッパでは死んだ人が話してはいけないという風潮が強いため、チームメイトの誰も報告できなかったのでしょう。
まあプロなら報告くらいしろとも言いたいですが、プロでもできないのだから我々素人はもっと気をつけなくちゃいけないよねという戒めを述べた上で、この単発記事を締めくくりたいと思います。
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