VOCALOID 第5世代(マルチメディア)

VOCALOID 第5世代(マルチメディア)

概要

発祥:2007’ 日本

全盛期:2020’~現在

2016年、Virtual Reality(通称「VR」)と呼ばれる、完全に仮想化された3次元環境の技術が一般層まで広く普及する。この新しい技術を活用した「バーチャルYouTuber」は、新たなエンターテインメント形態として受け入れられ、インフルエンサーとしての地位を確立した。

第4世代のアーティスト”ナユタン星人”や“かいりきベア”等の楽曲動画にはビジュアルの統一性が見られ、特にカバー動画を制作する際にビジュアルをオマージュしやすいといった特徴があった。この第4世代が生んだ精神性は、バーチャルYouTuberを発端に従来の歌い手や様々な活動者がカバー動画を多く生むきっかけとなり、第5世代の発展に影響を与えた。

  • “ナユタン星人”がコンポーザーとして携わった”ナナオアカリ”による『ディスコミュ星人』(2016.12.7) のサムネイル
  • “兎田ぺこら”による『ディスコミュ星人』(2020.4.4) のカバー動画のサムネイル

 

  • “天神子兎音”による『ベノム』(2019.11.29) のサムネイル
  • “天神子兎音”による『アンヘル』(2020.4.24) のサムネイル

2017年、動画投稿サイト「TikTok」の日本版のサービスが開始される。「TikTok」は若者が歌いながら踊る短編動画のプラットフォームという立ち位置を確立し、特に動画内では音楽が重要視された。

2020年にリリースされた『グッバイ宣言』は、歌い手やバーチャルYouTuber等のインフルエンサーによるカバー動画が多数投稿された。この楽曲はTikTokの2021年の年間Musicチャートで32.5億再生を記録し、1位に輝くなど、VOCALOID を普段聞かない層にも広く人気を博した。

 

影響を受けたジャンル

音楽的特徴

楽式

ザブスクライブサービスによるストリーミング再生、TikTok、YouTube の短編セクションであるYouTube ショート等に起因する「タイパ至上主義」に適合したため、楽曲の尺が3分程度で構成されている。そのため、第4世代までの特徴であった「wowaka式」はAメロの尺が長くなるため起用されない。また、サビパートも3回以上リフレインされることは滅多になく、2番までで構成されている。

サビパートのリフレインを行わない反面、サビの価値が従来の J-PopVOCALOID よりも高くなっており、サビパートに達するまでに楽節が多く挿入される。また、サビパートも2つ以上の楽節で構成されることがある。

 

Chinozo – グッバイ宣言 (2:52)
(サビ:C・D)

  • 導入句
  • 1番:A – B – C – D
  • 経過句
  • 2番:A – B – 経過句 – E – C – D

kanaria – KING (2:15)
(サビ:D)

  • 導入句
  • 1番: A – B – C – D
  • 経過句
  • 2番:A – B – D
  • 終結句

ツミキ – フォニイ (3:08)
(サビ:D)

  • 導入部:A – 導入句
  • 1番:A – B – C – D
  • 経過句
  • 2番:A – E – C – 経過句 – F – D

ピノキオピー – 神っぽいな (3:24)
(サビ:D・E)

  • SE
  • 1番:A(導入句) – B(経過句) – C – D1 – E – B(経過句)
  • 2番:F – D2 – C – D1 – E – B(経過句) – A(終結句)

 

代表曲

  • ラマーズP -【重音テト】おちゃめ機能【PV】(2010.4.1)

『おちゃめ機能』はボーカリストにオープンソースの歌声合成ソフトウェアプラットフォーム「UTAU」で使用される音声合成キャラクターの「重音テト」を起用している。

動画投稿の1ヶ月後に投稿された『吹 っ 切 れ た』(2010.5.10) という動画を発端に、様々なオマージュ動画が制作・投稿された。

特に『カラー化の為ラマーズP終了のお知らせ【Full】』(2010.5.15) のアニメーションを元に制作された”Lon”のカバーバージョンはニコニコ動画における歌ってみた動画の中で2番目に再生数が多く、VOCALOID 関連動画の中では5番目に再生数の多い動画となっている。

2020年には、バーチャルYouTuber事務所「ホロライブプロダクション」の所属メンバーによるカバーバージョン (2020.4.6) が投稿され、同曲のリバイバルに貢献した。バーチャルYouTuber における楽曲動画の中で3番目に再生数が多い動画となっている。

特に第5世代は『おちゃめ機能』のように、カバー動画などの「二次創作」や、楽曲が起用された全く別の動画を経由して本家の楽曲が知られることが多い。

 

  • Orangestar -【IA】アスノヨゾラ哨戒班【オリジナル】(2014.8.19)

『アスノヨゾラ哨戒班』ではボーカリストに1st PLACE社の「IA -ARIA ON THE PLANETES-」(通称「IA」)を起用しており、2024年現在、ニコニコ動画における IA 単体のオリジナル曲としては最も再生数が多く、VOCALOID 楽曲の中で7番目に再生数が多い楽曲となっている。

人間の発声音程を超えたハイトーンが特徴的で、まさに VOCALOID のために作られた楽曲である。しかし、その困難な歌唱に挑戦する歌い手が後を絶つことがなく、『おちゃめ機能』と同様に関連動画が多数投稿された。

  • ウォルピスカーター -【ウォルピス社】アスノヨゾラ哨戒班を歌ってみました【提供】(2015.4.3)

特に”ウォルピスカーター”のカバーバージョンはニコニコ動画における歌ってみた動画の中で最も再生数が多く、VOCALOID 関連動画の中では2番目に再生数の多い動画となっている。

 

  • カンザキイオリ – 命に嫌われている。/初音ミク (2017.8.17)

“カンザキイオリ”による『命に嫌われている。』は多数の「歌ってみた動画」が人気を博した。

“まふまふ”のカバーバージョン (2018.1.10) は1億回再生を突破し、YouTube における歌ってみた動画の中で2番目に、VOCALOID のカバーとしては最も再生数が多い動画となっている。2021年12月31日に放送された『第72回NHK紅白歌合戦』では、”まふまふ”が同曲を歌唱し、第5世代の精神性の普及に貢献した。

バーチャルYouTuberの”笹木咲”によるアレンジ・替え歌バージョン (2019.1.18) は、歌手として活動していないバーチャルYouTuberによる最初期の歌ってみた動画として著名である。

 

  • みきとP – ロキ/鏡音リン・みきとP (2018.2.27)

『ロキ』は鏡音リンと”みきとP”の肉声が組み合わさった、第3世代の歌唱スタイルが特徴的。2024年現在、ニコニコ動画における VOCALOID 楽曲の中で22番目に、YouTube における VOCALOID 楽曲の中で8番目に再生数が多い楽曲となっている。

「TikTok」でも中高生の若者層を中心に人気を博し、2022年現在、TikTokでの総再生回数は1億7600万回再生を記録している。

また、”まふまふ”と”そらる”によるカバー (2018.3.15)は、YouTube における歌ってみた動画の中で12番目に再生数が多い動画となっている。

 

  • Chinozo – Chinozo ‘グッバイ宣言’ feat.FloweR (2020.4.13)

TikTokでの「フィンガーダンス動画」や、歌い手やバーチャルYouTuberによる「歌ってみた動画」によって人気を博し、TikTok2021年上半期楽曲ランキングで首位、2021年6月のBillboard Japan Heatseekers Songsで首位を達成した。

2022年、YouTubeにて VOCALOID 楽曲初となる1億回再生を記録しており、2024年現在、YouTube における VOCALOID 楽曲の中で最も再生数が多い楽曲となっている。

その中でも”百鬼あやめ”によるカバーバージョン (2021.5.22) は、YouTube における歌ってみた動画の中で16番目に、バーチャルYouTuberの中では5番目に再生数が多い動画となっている。

 

  • kanaria -【GUMI】KING【Kanaria】(2020.8.2)

『KING』は特に「歌ってみた動画」等によって人気を博した。2024年現在、YouTube における VOCALOID 楽曲の中で6番目に再生数が多い楽曲となっている。

“葛葉”によるカバーバージョン (2020.11.10) は、YouTube における歌ってみた動画の中で5番目に、バーチャルYouTuberの中では最も再生数が多い動画となっている。

“Mori Calliope”と”Gawr Gura”によるカバーバージョン (2021.9.1) は、YouTube におけるバーチャルYouTuberによる歌ってみた動画の中では4番目に再生数が多い動画となっている。

“星街すいせい”によるカバーバージョン (2021.5.8) は、YouTube におけるバーチャルYouTuberの歌ってみた動画の中で13番目に再生数が多い動画となっている。

  

  • ツミキ – フォニイ – kafu [オリジナル] (2021.6.5)

ボーカリストにKAMITSUBAKI STUDIOが展開する音声合成「音楽的同位体・可不(KAFU)」(通称「可不」)を起用しており、『フォニイ』は可不のデモソングとして制作された。

2024年現在、ニコニコ動画における可不のオリジナル曲としては最も再生数が多い楽曲となっており、VOCALOID 楽曲の中で24番目に再生数が多い楽曲となっている。

“星街すいせい”によるカバーバージョン (2021.11.26) は、YouTube におけるバーチャルYouTuberによる歌ってみた動画の中では2番目に再生数が多い動画となっている。

“町田ちま”によるカバーバージョン (2021.8.5) は、YouTube におけるバーチャルYouTuberによる歌ってみた動画の中では番目に再生数が多い動画となっている。

 

  • ピノキオピー – 神っぽいな feat. 初音ミク / God-ish (2021.9.17)

11週連続10万回再生を記録し、みくみくにしてあげる♪(2007) 以来の快挙を達成した。2024年現在、YouTube における VOCALOID 楽曲の中で11番目に再生数が多い楽曲となっている。

J-Popの代表的アーティスト”Ado”によるカバーバージョンが投稿されているとしても有名。

“ラプラス・ダークネス”によるカバーバージョン (2021.12.1) は、YouTube におけるバーチャルYouTuberによる歌ってみた動画の中では10番目に再生数が多い動画となっている。

“ローレン・イロアス”によるカバーバージョン (2021.11.26) は、YouTube におけるバーチャルYouTuberによる歌ってみた動画の中では12番目に再生数が多い動画となっている。

 

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