Metallica は本当にスラッシュメタル四天王なのか?

はじめに

令和18年生まれのアンボと申します。
今日はメタルバンドの Metallica について語ります。

さて皆さんは「スラッシュメタル四天王」「BIG 4」「The Four Horsemen」などと呼ばれている4つのバンドをご存知ですか?

  • Anthrax – アンスラックス
  • Megadeth – メガデス
  • Metallica – メタリカ
  • Slayer – スレイヤー

ですね。

突然ですが、ここになぜ Metallica が入っているのか疑問に感じたことはないですか?

ここで述べるのは、他の3バンドと主要活動期間が被っている1st〜3rdの話です。
変拍子が多い4th『…And Justice For All』や、グルーブ重視の5th「Metallica」以降ではないです。

え? 別に疑問に感じたことはない?
では今から、私の主張を聞いてもらって、一緒に疑問に感じて欲しいです。

 

注意

私は Metallica の Battery がこの世で最も好きな曲であるため、この記事には Metallica のDis目的は一切含まれておりませんので、誤解がないようお願いします。

  • Metallica – Battery (1986)

 

Reign in Bloodより問題提起

Slayer の3rd『Reign in Blood』の Wikipedia にこういったことが書いてありました。

Alongside Anthrax’s Among the Living, Megadeth’s Peace Sells… but Who’s Buying?, and Metallica’s Master of Puppets, Reign in Blood helped define the sound of the emerging US thrash metal scene in the mid-1980s, and has remained influential since.

https://en.wikipedia.org/wiki/Reign_in_Blood

クソ翻訳:Anthrax の『Among the Living』、Megadeth の『Peace Sells… But Who’s Buying?』、Slayer の『Reign in Blood』、Metallica の『Master of Puppets』は、スラッシュメタルのサウンドを定義した。

 

Wikipedia の是非はおいといて、こういった話は正解がないのでほんまかどうかは知りません。
例えケリーキングが言ったとしても、事実だとは限りません。


ですがここではこの文章に則って、この4つのアルバムを中心に話を進めていきたいと思います。

スラッシュメタルに造詣が深い方も、認識に相違は無いかと思います。

 

  • Anthrax – Among the Living (1987)
  • Megadeth – Peace Sells… But Who’s Buying? (1986)
  • Slayer – Reign in Blood (1986)
  • Metallica – Master of Puppets (1986)

 

理由1:ダブルテンポが多く見られない

スラッシュメタルは、パンクやハードコアパンク(以下、ハードコア)から影響を受けたと言われてます。
特に疾走感が出るリズムは、従来のハードロックやNWOBHMとは違って特徴的です。
ではハードコアのリズムとは一体どんな物でしょうか。
ハードコアの先駆的バンドの曲を聞いてみましょう。

・Middle Class – Out of Vogue (1979)

・Bad Brains – Pay to Cum (1980)

・Minor Threat – Betray (1983)

口にするなら「ドッ パッ ドドパッ、ドッ パッ ドドパッ ‼︎」です。
8ビートを倍のテンポで叩くリズムなので、「ダブルテンポ」と呼ばれます。

このダブルテンポは Metallica ではあまり多く見られないです。

上述の Wikipedia に則って、4つのアルバムから統計を取ってみました。

『Among the Living』7/9曲(77%)
『Peace Sells… But Who’s Buying?』4/8曲(50%)
『Reign in Blood』10/10曲(100%)
『Master of Puppets』3/8曲(37%)

すると『Master of Puppets』だけ他のアルバムと比べてダブルテンポが少ないのが分かります。
ゆえに、スラッシュメタル的ではないと言えます。

もっと詳細に突っ込むなら、ダブルテンポが使われている時間の割合を集計するべきなのでしょうが、そこまでするのは時間がかかってめんどくさいのでやめます。
興味がある人は私の代わりに測ってください。

 

理由2:ハーフテンポが多く見られる

HR/HMでは「ハーフテンポ」という手法が用いられることがあります。
ダブルテンポとはダブルテンポとは逆で、8ビートを半分のテンポで叩いたリズムのことです。
これはジャズやブルース由来のリズムで、当時のパンクには見られることが少ないリズムです。

・Led Zeppelin – Fool in the Rain (1979)

・Toto – Rosanna (1982)

メタルにおいては、中間部などで緩急を付けるために用いられます。

・Dio – Don’t Talk To Strangers (1983)
0:35〜、2:01〜、3:29〜

・Iron Maiden – 2 Minutes To Midnight (1984)
3:09〜

・Guns N’ Roses – It’s So Easy (1987)
1:04〜、2:14〜

聞いて分かると思いますが、曲中にハーフテンポが導入されると、曲が遅くなったかのように感じます。

ゆえに、スラッシュメタルのようにスピードや攻撃性を求めるなら、曲中にハーフテンポは使わない方が得策です。
このハーフテンポが使われた曲数も集計しました。

『Among the Living』1/9曲(11%)
『Peace Sells… But Who’s Buying?』2/8曲(25%)
『Reign in Blood』5/10曲(50%)
『Master of Puppets』6/8曲(75%)

これも違いが大きく出ていますね。
『Master of Puppets』ではほとんどの曲でハーフテンポが使われています。
ゆえに、スラッシュメタル的ではないと言えます。

余談ですが『Reign in Blood』でハーフテンポが多く使われているのは意外でした。
しかしそれでもスピードを感じるのは、ダブルテンポが多いせいでしょう。

 

理由3:長尺主義である

ハードコアに見られる特徴がもう1つあります。
それは、短いということです。
短いものは1分で、長くても4分が限度です。

反対に、従来のハードロックやNWOBHMはジャズやプログレから影響を受けているので、長尺主義のDNAが含まれた楽曲がしばしば見受けられます。

  • Led Zeppelin – Stairway to Heaven (1971)
  • Rainbow – Stargazer (1976)
  • Rainbow – A Light In The Black(1976)

Iron Maiden – Hallowed Be Thy Name (1982)

つまり、よりスラッシュメタル的であるためには、短さが大事だと言えます。
反対に、長尺だとよりHR/HM的であると言えます。

アルバムの長さも統計を取ったので、比べてみてください。
これは、上述のアルバムを中心に、12枚から統計を取りました。

 

Anthrax
1st『Fistful of Metal』は、10曲で35分33秒(平均 3分33秒)
2nd『Spreading the Disease』は、9曲で43分40秒(平均 4分51秒)
3rd『Among the Living』は、9曲で50分13秒(平均 5分34秒)

後述する2バンドよりは長めです。
Anthrax はこの中では唯一ニューヨーク出身のパンクバンドなので、HR/HMの伝統である長尺主義に則ってメタル側にすり寄ってきた、もしくはサイケに影響されて長尺になったと考えるのが妥当でしょう。

 

Megadeth
1st『Killing Is My Business… and Business Is Good!』は、8曲で31分10秒(平均 3分53秒)
2nd『Peace Sells… But Who’s Buying?』は、8曲で36分18秒(平均 4分32秒)
4th『Rust in Peace』は、9曲で40分44秒(平均 4分31秒)

題名長すぎ

Megadeth の楽式は HR/HM の伝統に則っておらず、リフを繰り返したりすることは稀です。
それゆえに尺が長くならないのでしょう。
必ずしも、パンクに影響されて短くなっているとは言い切れません。
ただ、長尺主義ではないのは紛れもない事実です。

 

Slayer
3rd『Reign in Blood』は、10曲で28分58秒(平均 2分53秒)
4th『South of Heaven』は、10曲で36分54秒(平均 3分41秒)
5th『Seasons in the Abyss』は、10曲で42分27秒(平均 4分14秒)

Slayer は全体的にかなり短いですね。
先述の通り『Reign in Blood』はダブルテンポもほとんどなので、かなりハードコア的であると言えます。

 

Metallica
1st『Kill ‘Em All』は、10曲で51分18秒(平均 5分6秒)
2nd『Ride the Lightning』は、8曲で47分28秒(平均 5分56秒)
3rd『Master of Puppets』は、8曲で54分49秒(平均 6分51秒)

『Master of Puppets』は全ての曲が5分以上、8分超が3曲もあって、かなり長尺主義であると言えます。
Metallica で平均時間が一番短い『Kill ‘Em All』ですら、『Among the Living』以外の他のアルバムより長尺です。
また、アルバムの全体時間が一番短い『Ride the Lightning』は、『Among the Living』以外の他のアルバムより長尺です。

 

これも統計を取れば違いがよく分かりました。
ゆえに、スラッシュメタル的ではないと言えます。

 

一体 Metallica は何者なのか

以上の客観的事実から、Metallica はスラッシュメタルとカテゴライズするのは無理があると思います。

 

余談ですが、1st『Kill ‘Em All』ではダブルテンポが多く、6/10曲(60%)でダブルテンポが使われています。
敢えて、Metallica の中からスラッシュメタル的なアルバムを1枚選ぶとするなら、私は『Kill ‘Em All』を選びます。

しかしこのアルバムは世間から

スラッシュメタルの先駆け

http://ヘビーメタル.com/おすすめ曲・アルバム/metallica-kill-em-all-【アルバムレビュー】/

“スラッシュ・メタル”の礎

https://www.hmv.co.jp/artist_Metallica_000000000004495/item_Kill-Em-All-Rmt_6995520

初期作品ではニューウェーブ・オブ・ブリティッシュヘヴィメタル(NWOBHM)の色が濃く、サウンドにはアイアン・メイデンやジューダス・プリーストといったバンドと同列で聴けるような親和性がある。疾走感あふれるナンバーと衝動性に満ちた荒削りなサウンドからはパンク的なニュアンスも。

https://itunes.apple.com/jp/album/kill-em-all-remastered/1100958822

などと見なされているようです。

 

「先駆け」「礎」「パンク的」ってなんやねん?
では2nd以降はスラッシュメタルなのか?

私は上記の理由により、少なくとも2nd以降はスラッシュメタルではないと思います。
スラッシュ的な曲は一部あるとは思いますが、Metallica のサウンド=スラッシュではないと主張したいです。

では、私は Metallica の1st〜3rdを一体何と見なしているのか。
それは ヘヴィメタルの一種の到達点 でしょう。

正直、Metallica はスラッシュメタル四天王なんかに収まっていいバンドではないと思います。

なぜ Metallica がヘヴィメタルなのか?
その理由は、今後連載予定の自由研究
「『メタルである』とは?」シリーズを読んでね〜〜(唐突の宣伝)(オタク特有の早口)(アディダスの財布)(メタリカの筆箱)(親が買ってきたBlizzard of Ozz)(修学旅行でエメラルドソードを購入)(令和生まれは嘘)

もはやこれまで。

\(突然の死)/

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