講式
概要
発祥:6世紀
6世紀頃、インドで siddhamātṛkā(シッダマートリカー)と呼ばれるブラーフミー系の文字体系が成立され、729~749年の間に悉曇(しったん)という呼称で日本に伝来した。平安時代(9世紀)には、真言宗の開祖である”空海”が「悉曇学」と呼ばれる悉曇の音韻の研究を進め、『梵字悉曇字母幷釈義』といった著書を制作するなど、日本における悉曇の基礎を確立した。
全盛期:平安時代~江戸時代(9世紀~19世紀)
平安時代前期(9世紀)に天台宗の僧侶”安然”によって、”空海”などの「入唐八家」によって派生されていた「悉曇学」をまとめた『悉曇蔵』が執筆され、悉曇の普及に貢献した。同時期に、”空海”や”最澄”によって唐より声明(しょうみょう)と呼ばれる仏教声楽が伝えられたものの、日本人にとっては難解であったため、漢文の読み下しが起用された講式という形式の声明が成立した。
衰退:1868’
戦乱や明治期の廃仏毀釈によって寺院が荒廃し、多くの声明の流派が廃絶した。
影響を受けたジャンル
- 悉曇
- 声明
音楽的特徴
旋律
中国に起源を発する音楽理論である五声が利用される。五声は西洋音楽の音階との対応を示すことが可能で、ド・レ・ミ・ソ・ラの五音音階を形成している。
歌詞
- 漢文訓読体の文章で綴られた詞章
- 仏、菩薩、祖師などの徳を称えたり、実績が述べられる。
楽器
- 僧による声
- 鏡(にょう)
- 銅鉢
- 錫杖
- 木魚
- 割笏(かっしゃく)
- 鐃鈸(にょうはち)
代表曲
- 源信撰 – 二十五三昧式 (986)
- 源信撰 – 六道講式
“源信撰”による『二十五三昧式』と『六道講式』は、作者が確定している作品では最古の講式と言われている。
『二十五三昧式』では念仏者集団の規範が語られ、『六道講式』では六道の苦しみを逃れ、極楽往生を遂げようとする教えを説いている。
- 知恩講式
浄土宗の開祖である”法然”の滅後、遺弟らによって『知恩講式』が作成された。五段の講式文より構成されており、”法然”の生涯を忍ぶとともに専修念仏を勧めた講式となっている。
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